

服を送るということ
お仕立て上がったお洋服をお送りするとき、 どんな箱に入れようか。 どんな包装にしようか。 そんなことを、ずっと考えてきました。 以前はドレスケースに入れていたこともありますし、きれいな紙箱を選んでいた時期もありました。 けれど、考え続けた先で、今はシーチングで作った布袋に落ち着いています。 お洋服をお包みし、黒い組紐を結び、ご希望の方にはラベンダーのサシェを添える。 とてもシンプルな包みです。 けれど私は、包装は開けたら終わりのものではなく、その後も暮らしの中で使えるものであってほしいと思っています。 クローゼットで大切な服を休ませる袋として。 旅先へ持っていく荷物入れとして。 あるいは、季節のストールをしまう袋として。 役目を終えたら捨てられてしまうものよりも、少し長く寄り添えるものの方が好きなのです。 この袋には、20年以上前に作った小さなネームを付けることがあります。 カンボジアシルクの仕事をしていた頃のものです。 当時は、その美しさを伝えたくて夢中でした。 ...


異国へ ─ 生地を探す旅
旅先で市場を見つけると、つい足が向いてしまいます。 観光地よりも先に、布屋さんを探していることも少なくありません。 マレーシアのインド人街で見つけた色鮮やかなサリーの生地。 店いっぱいに並んだ布は、まるで花畑のようでした。 日本ではなかなか見かけない色合わせ。 思い切った柄。 光を受けて揺れる刺繍。 文化が違えば、美しいと感じるものも少しずつ違います。 けれど、その違いに触れるたびに思うのです。 美しさには、国境がないのだと。 パリの生地屋さんでも同じことを感じました。 静かに積み上げられたプロバンス更紗。 繊細なレース。 古い木の棚。 何十年も変わらずそこにある空気。 生地を見ているだけなのに、その国の歴史や暮らしが見えてくるようでした。 旅先で買った布のすべてが作品になるわけではありません。 けれど、その土地で見た景色や空気は、必ずどこかで私の仕事につながっています。 服になったり。刺繍になったり。色合わせになったり。 あるいは、まだ形になっていないアイデアの種になったり。 だから私は、旅先で布を探します。...